Rio Tinto・首鋼の高炉ガス回収試験が示す、鉄鋼脱炭素の実装条件
ニュースの概要
Rio Tintoと中国の首鋼集団は、北京に近い京唐の製鉄拠点で、高炉から出るガスに含まれる二酸化炭素を回収する試験設備を稼働させました。設備は毎時3,000立方メートルのガスを処理し、年間で最大1万トンの回収を見込んでいます。両社は2022年の覚書を足掛かりに、鉄鉱石の供給から製鉄までを含む排出削減策を検討してきました。今回の試験は、理論上の回収性能だけでなく、操業中の製鉄所で技術を動かし、安定性や費用、回収後の扱いを確かめる段階に進んだことを示します。
引用元: Rio TintoとShougangが中国の製鉄所で炭素回収試験設備を稼働(Reuters)
分析・見解
高炉を止めずに回収できるかが試験の核心
高炉ガスは製鉄工程で大量に生じる一方、二酸化炭素だけでなく一酸化炭素や水素なども含む。ガスの組成や温度、流量は操業状態で変わるため、回収設備には変動への対応が求められる。毎時3,000立方メートルの処理能力は、商業規模の導入を証明するものではない。しかし、実際の製鉄所で運転条件の揺れを受けながら試せる点に価値がある。安定して回収できる時間、設備の停止頻度、製鉄側への影響を記録できれば、次の設計に必要な根拠が得られる。
年間1万トンは産業全体の削減量とは別に読む
年間最大1万トンという数字は、試験設備の目標値であり、首鋼の排出全体を大きく減らす規模ではない。世界の鉄鋼生産は年間約20億トンに達し、製鉄は産業部門でも排出削減が難しい分野の一つだ。したがって、今回の意義は回収量の絶対値より、実操業で回収技術を検証することにある。将来の大型化を判断するには、ガス中の二酸化炭素濃度、回収率、必要な熱や電力を公開し、処理量を増やした際に性能が保てるかを示す必要がある。
回収後の貯留先とエネルギー源が環境効果を左右する
回収は排出対策の途中段階だ。集めた二酸化炭素を圧縮し、輸送し、地中に貯留するのか、原料として利用するのかで、追加の費用と排出が変わる。回収設備が化石燃料由来の電力や熱を大量に使えば、見かけの回収量ほど温室効果ガス削減につながらない可能性もある。評価では、回収設備単体の数字でなく、エネルギー供給、輸送、貯留を含む全工程の排出を比較すべきだ。貯留場所の確保と長期管理の仕組みも、設備拡大の前提となる。
鉱石供給側との協業は削減責任の分担を変える
鉱石会社と製鉄会社の連携は、鉄鋼の排出を個社の工場だけで捉えず、原料から鋼材までの流れ全体で減らそうとする動きといえる。原料の品質や供給条件は製鉄のエネルギー使用にも影響するため、排出削減技術の共同検証には合理性がある。一方、削減量をどの会社の成果として計上するかは、取引や環境情報の開示で争点になり得る。測定方法と報告範囲を先にそろえ、回収量と実際の削減量を分けて示すことが、投資家や鋼材購入者の信頼につながる。
ビジネスへの影響
導入判断では回収量より一トン当たりの全費用を見る
製鉄会社が検討すべきなのは、設備の処理能力だけではない。回収設備の建設費に加え、運転に必要な電力・熱、圧縮、輸送、貯留の費用を含め、二酸化炭素一トンを実際に減らす総費用を試算する必要がある。さらに、定期点検や故障で高炉の操業に影響が出ない設計か、既存の配管や敷地に接続できるかを確認する。試験段階では、回収率だけでなく、稼働率、エネルギー消費、停止時間、回収物の純度を同じ条件で記録すると、商業化後の費用を見積もりやすい。
購入企業は鋼材の排出データと削減実績を分けて確認する
自動車、建設、機械などの鋼材購入企業にとって、低炭素鋼材の調達は重要な選択肢になりつつある。ただし、回収設備があるという事実だけでは、製品一トン当たりの排出がどれほど減ったかは分からない。供給契約では、製品単位の排出量、算定範囲、第三者による確認の有無を確かめたい。回収した二酸化炭素を利用した場合も、長期間固定される用途か、燃料などとして再び大気に戻る用途かで削減効果は異なる。実証段階では購入量を急に増やすより、少量調達や共同評価を通じて、品質、供給安定性、価格差を確認する方法が現実的だ。
投資計画は政策支援と貯留網の整備を条件に置く
回収設備の採算は、炭素価格や補助制度だけでなく、近隣に輸送網と貯留先があるかにも左右される。企業は単独設備の収支とともに、地域の二酸化炭素輸送計画、貯留許可、責任分担の状況を調査する必要がある。政策やインフラが未確定なら、段階投資とし、試験データが得られた時点で次の規模へ進む判断基準を定めるのがよい。今回の試験から得られる運転データは、設備の技術評価にとどまらず、供給契約や共同投資の条件を交渉する材料にもなる。