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Eniが英国で洋上CO₂貯留基地を設置、産業脱炭素の転換点に

Eniが英国で洋上CO₂貯留基地を設置、産業脱炭素の転換点にのイメージ

ニュースの概要

Eniと投資会社Global Infrastructure Partnersの合弁会社Eni CCUS Holdingが、英国のリバプール湾でDouglas CCSプラットフォームの設置を終えたと発表した。産業の脱炭素のために最初から設計された洋上CCS施設としては世界初だという。イングランド北西部と北ウェールズの工場などで回収したCO₂を受け入れ、既存の海底設備を使って地下に送り込む計画である。これまで石油・ガス用の古い設備を転用する例が多かったなかで、CO₂を扱うことを前提に新設した点が特徴だ。

引用元: Eni、英国リバプール湾で世界初の産業脱炭素向け洋上CCSプラットフォームを設置(Rigzone)

分析・見解

転用ではなく専用設計という選択が持つ意味

CO₂貯留の先行事例では、役目を終えたガス田の設備を再利用する方法が主流だった。費用を抑えられる一方で、設備はもともと天然ガスを取り出すために造られている。CO₂を逆向きに注入すると、配管の腐食や温度変化による部材の傷みなど、想定外の負荷が生じやすい。

Douglasは最初からCO₂の注入を前提に設計された。材料の選び方や、圧力・温度の管理方法を注入作業に合わせて決められる。長く安全に使い続けるための土台を、建設の段階で整えたと言える。

既存の海底設備をつなぎ直す、費用を抑える工夫

もっとも、すべてを新品で揃えたわけではない。このプロジェクトは、既存の海底パイプラインや貯留に使える地層を生かしている。つまり新設するのは海上の中枢部分だけで、海底のインフラは再利用する形だ。

これは「専用設計」と「再利用」のいいとこ取りである。全面新設は費用が膨らみ、全面転用は将来のリスクが残る。両者の中間を選んだ判断は、他国の案件にも参考になるだろう。

北海の先行事例と比べて見える立ち位置

欧州では、ノルウェーのSleipnerが1996年から海底下にCO₂を入れ続けてきた。年間約100万トン規模で、長期運用の実績は大きい。ただ、これは天然ガス生産に伴って出るCO₂の処理が中心だった。

リバプール湾の特徴は、発電所や化学工場、セメント工場など、産業の排出源から集めたCO₂を受け入れる点にある。CO₂を出す側と貯める側が距離を隔てて結ばれる「産業クラスター型」の代表例になる。英国政府が地域ごとに集中整備を進める方針とも合致する。

本当の課題は海の上ではなく陸の側にある

見落とされがちなのは、貯留設備が完成しても、回収設備が追いつかなければ稼働率が上がらないことだ。工場側で回収装置を付ける投資は重く、補助金や炭素価格が不十分だと決断が遅れる。

貯留側は先に準備ができても、CO₂が届かなければ収入が得られない。この「鶏と卵」の問題をどう解くかが、今後数年の勝負どころになる。関連する基礎は当サイトのCCUS基礎解説や、回収技術のページでも整理している。

ビジネスへの影響

排出する側にとって、貯留先が見えることの価値

製造業にとって最大の悩みは、回収したCO₂の行き先が確保できないことだった。貯留先の候補が現実の施設として動き出すと、回収装置の投資判断がしやすくなる。

自社の排出量が多い工程を洗い出し、回収の費用を1トンあたりで試算しておきたい。貯留先までの輸送費を含めた総額で比べないと、判断を誤りやすい。

日本企業が今から整えておくべき三つの準備

一つ目は、排出源の分析である。高濃度のCO₂が出る工程から着手すると、回収の費用を抑えやすい。二つ目は、複数の事業者で共同利用する発想だ。単独では採算が合わなくても、近隣の企業と束ねれば輸送や貯留の費用を分け合える。三つ目は、制度の動きを追うことである。炭素価格や支援策の変更は、投資回収の見通しを大きく左右する。

日本でも北海道や九州沖などで貯留の調査が進んでいる。海外の事例を読み、自社の工場がどのクラスターに入り得るかを早めに考えておくと、交渉でも有利になる。

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