このページはPR・広告を含みます

ドイツ炭素差額契約にCCUS枠 初の技術別予算の意味

ドイツ炭素差額契約にCCUS枠 初の技術別予算の意味のイメージ

ニュースの概要

ドイツ政府は、2027年に実施する炭素差額契約(CCfD)の次期入札に向け、参加企業の事前資格審査を始めた。今回は初めて技術ごとに予算の枠が分けられ、炭素の回収・利用・貯留(CCUS)向けの専用枠も用意される。CCfDは、低炭素の設備を導入したときに生じる追加費用と、実際の炭素価格との差を政府が埋める仕組みである。排出削減への投資が採算に乗るかどうかを、長期にわたって見通せるようにする狙いがある。CCUSは回収設備に加え、CO₂の輸送網や貯留地まで含めた一連の事業であり、制度設計の難しさも指摘されてきた。今回の枠組みは、その壁を崩す試みとして位置づけられる。

引用元: ドイツ、CCUSを対象に含む炭素差額契約の次期入札を開始(Carbon Pulse)

分析・見解

初の技術別予算枠が示す、国の本気度

これまでの入札は、技術の種類を問わず、安い順に支援先が決まる方式だった。この方式では、導入費が比較的低い技術が先に採択されやすい。CCUSのように初期費用が重い技術は、選ばれにくかった。

今回、技術ごとに予算を分けたことで、CCUSは水素還元製鉄や電化炉と直接競わずに済む。政府が「この技術は育てる」と先に宣言した形である。

差額を埋める契約が、投資の不安を減らす理由

CCfDの核心は、炭素価格が上がっても下がっても、事業者の手取りが一定の範囲に収まる点にある。たとえば、削減の費用が1トンあたり120ユーロで、市場の炭素価格が80ユーロなら、差の40ユーロを政府が負担する。逆に価格が高騰して上回れば、事業者が差額を返す設計が一般的である。

炭素価格は政策や景気で大きく揺れる。15年単位の投資で、その揺れを企業が単独で抱えるのは難しい。契約で揺れを吸収すれば、銀行も融資を出しやすくなる。

CCUSは回収だけでは完結しない

CCUSの費用は、三つの段階に分かれる。排ガスからCO₂を取り出す回収、パイプラインや船での輸送、そして地下や海底への貯留である。回収設備を建てても、運び先と貯留地がなければ動かせない。

北海では、ノルウェーのNorthern Lightsが船による受け入れを始めている。ドイツは国内の貯留に長く慎重だったが、近年は海底貯留を認める方向へ法整備を進めてきた。今回の専用枠は、回収側の投資を呼び込むことで、輸送や貯留の事業にも需要を生む役割を持つ。

見落とされやすい「需要の保証」という効果

独自の視点として強調したいのは、この制度が回収事業者だけでなく、輸送網や貯留事業者への需要の保証になる点である。貯留地の運営会社は、安定してCO₂が届く見込みがなければ投資できない。支援を受けた回収設備が複数立ち上がれば、貯留側も契約を結びやすくなる。

一方で、課題も残る。支援額が大きくなれば財政負担が重くなり、政権が変われば方針が揺れる懸念もある。長期契約の信頼は、制度の継続性にかかっている。

ビジネスへの影響

欧州向けの事業は、支援前提で採算を組み直す

欧州に工場や取引先を持つ企業は、CO₂を運び先まで含めた総額で費用を試算し直す価値がある。支援制度があると、同じ設備でも採算が大きく変わるからだ。

特にセメント、化学、鉄鋼のように、工程そのものからCO₂が出る業種は、設備の改良だけでは排出を減らしにくい。そのため、CCUSを含む脱炭素計画が支援対象になるかどうかは、投資判断の分かれ目になる。

日本企業が今から備えたい三つの点

第一に、回収設備や輸送機器を供給する企業は、ドイツの入札参加者との提携を早めに探りたい。事前資格審査の段階から、案件づくりは始まっている。

第二に、日本国内でも同種の価格差支援が議論されている。ドイツの落札価格や契約条件は、日本の制度設計を占う手がかりになる。自社の削減費用を1トンあたりで把握しておくと、制度が出たときに素早く動ける。

第三に、輸送と貯留の確保は、回収設備と同じ重みで検討したい。設備だけ整えて貯留先が決まらない、という失敗を避けるためである。海外貯留の可能性も含め、複数の選択肢を持っておくことを勧める。

関連記事

← ブログ一覧へ戻る